仙台育英の選手らが5日、優勝報告のため市役所を訪れた。正面玄関前では市職員、市民ら約200人が消防音楽隊の演奏とともに盛大に出迎えた。

 「パレードを高野連に止められている以上、これが精いっぱいの誠意だ」と市幹部。郡和子市長も優勝翌日の8月23日、報道各社の取材に「高野連から学校に控えるよう要請があり、残念ながらパレードはできない」と理解を求めた。

 快挙を祝福するパレードを望む声は、市議会や商工関係者の間で今もくすぶる。JR仙台駅東口の住民や企業でつくる「仙台駅東まちづくり協議会」の担当者は「悲願の白河の関越えを果たした学校の地元として、パレードを期待する声は根強い」ともどかしさを口にする。

 東日本大震災以降、仙台市内では、スポーツ分野の偉業をたたえるパレードがたびたび行われている。プロ野球東北楽天の優勝パレード(2013年)、フィギュアスケート男子で五輪連覇を果たした羽生結弦さん=仙台市出身=の凱旋パレード(14、18年)では、沿道に9万~21万人が詰めかけ、震災で被災した県民らを元気づけた。

 青森市では今年1月、第100回全国高校サッカー選手権で優勝し、「高校三冠」を成し遂げた青森山田サッカー部のパレードが行われている。

 なぜ高校球児のパレードはNGなのか。高野連が大会出場校に事前配布する「代表校の手引き」には「パレードは高校生を英雄扱いし、誤った心情を植え付ける」との記載がある。高野連担当者は「高校野球はあくまでも教育や部活動の一環。雑踏事故防止の面からも、一律に自粛を求めている」と説明する。

 仙台育英の須江航監督は今月5日の市役所訪問時、報道機関に「十分に市民の方々からお祝いを頂き、感動させてもらった。高野連の方針に従う」と語った。

 高校球児のパレード断念には先例がある。福井県敦賀市は15年、春の選抜大会で北陸勢として初優勝した敦賀気比のパレードを検討したが、高野連の方針を踏まえて断念した。

 「高校野球の経済学」などの著書がある中島隆信慶応大教授(応用経済学)は、甲子園球場の使用料免除など「特別扱い」を受けてきた高校野球が批判の対象とならないよう、商業性をできるだけ排除することに高野連が腐心してきたと指摘。「間接的に商業性を帯びるパレードを現状では認めることはできないだろう」と話す。

https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/d33e9170c0aca5ba3221ada1cc71a498eacb4a27&preview=auto