かつて、ある審判員を取材した際、微妙な判定や誤審をした時はヤジを受けるだけでなく、ファンに囲まれたり子どもがいじめにあったりした経験談を聞いた。今はネットでの中傷も深刻化しているという。

 「ネットは匿名だから傷つけることを平気で言うし、耐えがたいものがある。やってしまったとき、審判もその瞬間に99%分かっているんです。ジャッジのことを書かれるのはまだ我慢できる。でも人格まで否定され、憶測で間違った情報が共有されて、イメージをつけられる。自分だけならともかく、ネットは家族、子供、友人も見ることもありますから」。こう語るのは18年までNPB審判員を務めた坂井遼太郎さん。

 審判の仕事は極限の緊張感の中で円滑に試合を進めることができれば、終わった後は開放感で満たされる。だが、大観衆の前でひとつのミスをすれば、批判の的となる。それが勝敗に関わるジャッジであれば、大騒動へと発展する。

 「ネットの書き込みを気にしている方はかなりいます。不眠症の人は相当いると思います。睡眠薬を持っている人もいますから。普通の精神で4万人、5万人のなかでジャッジできない。やっぱり精神的に不安定になる人もいます」

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