将棋連盟は今年2月より、健康上の理由がある場合や飲食など一時的な場合を除き、対局時にマスクを外した場合、反則負けになるという規定を定めている。

 ところが10月28日に行われたA級順位戦、永瀬vs.佐藤戦の終盤、盤面に集中する中で佐藤九段がマスクを外したまま思考の海に沈んでしまったのだ。激戦は深夜に及んでおり、立会人もいなかった。当事者以外に将棋会館に残っているのは、数名の観戦記者と連盟関係者のみだった。当日の様子を知る将棋連盟関係者が言う。

 「永瀬先生は、佐藤先生がマスクを外してから、5回も記者室にやってきて『反則負けにしてください』と要求しました。ただ、記者としても自分たちで勝負を決めるわけにはいかないので、渉外担当理事だった鈴木大介九段に連絡して、裁定を受けるため時間がかかっていたんです」

 中断時の局面の形勢は、将棋ソフトの評価値で言えば500点程度、後手番の佐藤がやや有利な局面だった。その後、佐藤の反則負けが決定し、一般ニュースで報じられた際、朝日新聞が「ちなみに囲碁の場合は、マスク着用を促す注意がなされ、それに従わなければ失格となる」と報じたことも手伝い、「なぜ一言、本人に注意してからの反則負けにしなかったのか」という意見がSNSなどにさかんに投稿された。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9d7b18a31d709777c51b09146d4809ca00d266a0