穏やかだった栗山監督の表情が一変した。それは選手選考について話が及んだときのこと。「ジャパンの監督は非情なり、だから」。勝負師としての覚悟がにじんだ。

 11月の強化試合を終え、候補選手一人一人のことを考え、向き合う12月。ニュースを見れば多くの選手たちがWBCへの出場意欲を語っている。嬉しさ、ありがたさを感じながらも「それがね、グサグサ来るの。選んであげたいけど……。見ない方がいいんだけど、どういう意図でこっちにメッセージを送っているんだろうっていうのは感じないといけないし、選手のメッセージを無視するわけにはいかないから」と本来の優しさがのぞく。

 それでも「やるしかない」と“非情”を宣言するのは、国を背負い、勝つことだけにこだわるからだ。束ねるのは一流選手だけに「俺ら以上に野球を分かっているし勝ち方を知っているから、“ここは自分じゃないだろ”っていうのも分かっている。だから、そこでバサッと代えられなかったら、この人何やっているんだろうって絶対思うから、そこはしっかりとやります」と采配面でも方針は同じ。「嫌われないとダメなんです。まあ元々嫌われているタイプだから大丈夫」と笑いながら、その目は本気だった。