(セ・リーグ、阪神4―1巨人、巨人3勝1敗、15日、甲子園)息もできないほど沈んで、負の流れに飲まれていた。もう一度浮かび上がるためだったら、なんだってする。久々の勝利監督インタビューでカメラに向かい「ちょっと時間大丈夫ですか?」と、おもむろに色紙を取り出した。この「波」を生み出したのは、他ならぬ阪神・矢野監督自身だった。


「友達のアンジュルムの竹内朱莉さんに来ていただいて。365枚ある札の中から、漢字を一文字引き当てるんですけど、僕がチームをイメージしながら引いたのが『波』という字でした-」

掲げた書にカメラが寄り、大映しにする。ここから押し返したい、チームを乗せたいという一心が込められていた。1勝15敗1分けというプロ野球史上に残るつまずきを見せ、甲子園に帰ってきた。この巨人との3連戦に矢野虎の「運命」が懸かっているようにさえ思えた。だから、友人である書家を試合前の球場に招き、言葉を授かり、自ら試合前の円陣で声出し役を務めた。選手らに向かってこの書を読み上げ、声を張り上げた。

「やっぱり楽しむっていうことやな! 勝ち負けもあるし、苦しいのは俺も分かってるし、みんなもそうやけど、俺らの野球、楽しむ野球、そういう野球を全員で、やりましょう!」

書によって「波」に乗るのも異例なら、本来なら若手が務める声出し役を指揮官が務めるのも異例中の異例だ。これで2勝15敗1分け、勝率は一気に「・118」だ。

「潮も引いて、波が起きる。浮き沈みはあるけど、みんなで大きい波をつくっていこう、それは楽しむことが一番大事じゃないかというメッセージをもらって、きょう戦っていました」


もう引かない。ここまでやって、さざ波や、第一波だけで終わっては元も子もない。虎将が、セ界に波紋を広げる。(それでも動く名無し)