鬼越トマホークのネタには、高度な芸術性が感じられます。そのネタはシュルレアリスムの一環として位置づけられるでしょう。金ちゃんがセリフを棒読みで演じることで、客に対して「これは作家の書いた台本を演じています」というメタフィクション的な意図を示しているのです。

彼らは明言はしませんが、それを理解する観客に対してメタ的な要素を持ち込むことで、ネタに深みを与えています。このような手法はハッキリとは語られないメタネタとして展開され、知る人には分かる特別な楽しみを提供しています。

さらに、鬼越トマホークの坂井は、クロちゃんへのオマージュをしながらも、強面のイメージを覆さない声で演じることによって、クロちゃんの常識を破壊しています。この裏切り行為は、私たちに共通の認識であるクロちゃん像に対しての驚きと興奮をもたらします。

(お笑い評論家・リリー守山)