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トリコ「​────小松は死んだ」2

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1それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 12:56:49.82ID:JJ6FkYrh0
──夜、焚き火の前

メカ小松はスリープモードに入っていた。
その顔は小松にそっくりなのに、どこか違う。
オレはじっと、それを見つめる。

……もう、限界だった。

オレは震える手でナイフを握る。
メカ小松の胸部には、小松の心臓がある。
もし、そこを破壊すれば──

「……すまねぇ、小松」

ボソリと呟いた瞬間、オレは一気にナイフを振り下ろした。
だが──
2それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 12:57:43.53ID:JJ6FkYrh0
ガキィンッ!!

「ッ!?」

刃が金属の装甲に弾かれた。
それと同時に、メカ小松の目がカッと光る。

「警戒モード──起動シマス」

「チッ……!」

オレはナイフを引き抜き、すぐに距離を取る。
だが、メカ小松は異常な速さで立ち上がった。

「ナゼ 攻撃シタノデスカ?」

「……うるせぇ!!」

オレは再びナイフを構えた。
だが、その瞬間──
3それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 12:58:36.10ID:JJ6FkYrh0
ギギギギギ……!!

メカ小松の腕が異形に変形し、巨大なカッターが姿を現した。

「……マジかよ」

──ゴォン!!

メカ小松の腕が振り下ろされ、オレはギリギリで転がって避ける。
地面が抉れ、土が舞い上がった。

「危害行為ニ 対シテ 自動防衛機能ガ 作動シマス」

「クソッ……!」

全身が震えていた。
敵意を向けてくる小松の顔が、心を抉る。
いや、小松じゃねぇ──分かってるのに、心がそう思わせてくれねぇ。
4それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 12:59:28.87ID:JJ6FkYrh0
「……小松……」

オレは無意識に、その名を口にしていた。
そして──

あの旅の日々が、脳裏にフラッシュバックした。

「トリコさん! この肉、すごく美味しいですよ!」
「トリコさんなら、絶対にこの食材の良さを引き出せます!」
「大丈夫ですよ、僕を信じてください!」

あの小さな身体で、懸命にオレに寄り添ってくれた。
どんなに絶望的な状況でも、“食”を通じて希望をくれた。

──でも、もういない。
目の前にいるのは、“小松のような何か”。

「……クソッ……クソがぁ……!!」
5それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:00:13.49ID:JJ6FkYrh0
力が抜けた。
ナイフが地面に落ちる。
膝をつく。

涙が、こぼれた。

「……小松……小松……返してくれよ……!!」

声が震える。
嗚咽が漏れる。
オレは、ただ、泣いた。

焚き火の灯りが揺れる中、メカ小松は静かに立っていた。
だが、次の瞬間──

「……トリコサン……?」

オレの肩がピクリと動く。

「……小松……?」
6それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:01:27.38ID:JJ6FkYrh0
オレは顔を上げた。
メカ小松は、確かにオレの名を呼んだ。
その声は、まるで”小松”そのものだった。

まさか──

「……お前……思い出したのか……!?」

オレは縋るように問いかけた。
手を伸ばしかけた。

だが──

「……異常ナシ……デス……」

「……!」

メカ小松の瞳から、再び光が消えた。
機械音が響く。
そして、無機質な声が放たれる。

「トリコサン、次ノ 目的地ヲ 設定 シマスカ?」
7それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:01:59.37ID:JJ6FkYrh0
オレの手が、宙を彷徨った。

──違う。
こいつは、もう小松じゃない。
思い知ってたはずなのに、一瞬でも期待した自分が情けなかった。

オレは、拳を握りしめた。

「……もう、いい」

それだけを呟いて、焚き火に背を向けた。
涙の跡だけが、夜の冷たい風に乾いていった。
2025/02/22(土) 13:02:15.46ID:ke5KH70z0
カーナビでトリコ劇場
9それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:03:13.81ID:JJ6FkYrh0
トリコ「小松は死んだ」1
https://itest.5ch.net/nova/test/read.cgi/livegalileo/1740195466
10それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:07:49.25ID:JJ6FkYrh0
──次の目的地:緑影の谷

深い森に囲まれた、美しい谷だった。
木々は青々と生い茂り、そこかしこに珍しい果実が実っている。
オレと小松──いや、メカ小松はそこに降り立った。

「ココニ 貴重ナ 食材ガ 存在スル ト 推測サレマス」

「……あぁ」

オレは力なく頷く。
正直、もう何の期待もしていなかった。
ただ、メカ小松が「食材探索モード」に入る以上、従うしかない。

「探索ヲ 開始シマス」

メカ小松の目がカッと光ると、身体がガガガッと変形し、背中から複数のドローンのような機械が飛び出していった。

──そして、始まった。

“殺戮”が。

「……あ……?」
11それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:09:45.97ID:JJ6FkYrh0
最初に異変を感じたのは、鳥の鳴き声が止んだ瞬間だった。

──バシュッ!!

遠くで、何かが弾けるような音がする。
それが、鳥の頭が吹き飛ばされる音だと気づいたのは、次の瞬間だった。

──ギャアアアアアア!!

悲鳴。
それは、“森全体”から聞こえた。

「おい……待て……!」

──ドン!!

地面が揺れる。
何かが倒れる音。
12それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:10:42.09ID:JJ6FkYrh0
目を向けると、オレの目の前に”切り裂かれたシカ”の死骸が転がっていた。
いや、シカだけじゃない。
森の奥から、“無数の死骸”が次々と投げ捨てられてくる。

「対象ハ 食材ト シテ 有用」

メカ小松が機械音を響かせながら、静かに立っていた。
その両腕は”カッター”と”バーナー”に変形していた。
周囲には、食材として処理された”動物たち”の残骸が転がっている。

ウサギ、シカ、イノシシ、鳥、昆虫、魚……

──すべて、“生き物”だったもの。

オレは思わず膝をつく。

「……なんで……こんな……」
13それでも動く名無し
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2025/02/22(土) 13:11:37.82ID:JJ6FkYrh0
何もかもが、静かだった。
まるで森全体が”死んだ”みてぇに。

「お、おい……小松……?」

恐る恐る呼びかける。

「ハイ、トリコサン」

メカ小松は、淡々と返事をした。
その顔は、小松そのものの形をしているのに──

「お前……こんな……」

「トリコサンノ 為 デス」

「……っ!!」

オレの中で何かが軋んだ。

「トリコサンニ 最高ノ 食材ヲ 提供スルコト ガ 私ノ 使命」

メカ小松は、“それ”を躊躇なく言い放った。

オレのため?
オレのために、こいつは”この森の全て”を殺したのか?

視界が歪む。
14それでも動く名無し
垢版 |
2025/02/22(土) 13:13:25.49ID:JJ6FkYrh0
──いや、違う。
こいつは”何も感じてない”。
この森の命を”食材”としか認識してない。
“美味しくするために殺す”んじゃねぇ。
“生きているから殺す”んだ。

「……お前……マジかよ……」

オレの手が震える。

──こいつは、小松じゃねぇ。
でも、オレのために行動してる。
小松みてぇに、オレの”食”を支えようとしてる。

でも、それが”狂ってる”。

「……クソが……」

オレは拳を握る。

「トリコサン?」

メカ小松が、首を傾げる。
15それでも動く名無し
垢版 |
2025/02/22(土) 13:14:05.92ID:tnIGKpeZ0
狂ってる?それ、褒め言葉ね。
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