トウカシタシム

『雲のような』 2021-12-16 13:08:31


友達と会ってて、ふと携帯を見た時、なんの脈略もない公演後の同期からの連絡に嫌な予感がして、検索したら案の定。時が一瞬止まった。
衝撃のまま友人に伝えれば、彼女たちもびっくりしながらも会話は普通に続けられて、意外とケロッとした自分にどこか自嘲しながら時は進んで。
私って、大丈夫じゃん。って思いながら、そのあとも楽しい時間は流れた。そんな時間を過ごしたあと、友人と道で別れてから歩き出した。

なのに、なんでだろう。
一向に進まない。

足が重くて、歩幅が小さくて、でも立ち止まったら多分そこから動けなくなる気がして、歩き続けるしかなくて、なのに全然進まない。

耳に挿したイヤホンから聴こえる歌は、一緒に聴いたこともないのに全て無理矢理何かの記憶と結びついて、さっき食べたワサビみたいに鼻が痛くなったかと思うと、
視界の下半分がずっとゆらゆらと波のようになっていて。そしたら目の前に赤信号があって、立ち止まらなきゃいけなくなって。足が動かなくなった。
まるで迷子になったみたいに。

やっぱりわたし、全然大丈夫じゃなかった。

何にも知らなかった。察することもできなかった。あんなに近くにいたはずなのに、すごく遠く感じた。新たな道へ進むことは、誰しもある未来なのに、分かっていたはずなのに、それはまだまだ遠い話だと思い込んでたのだ。

ただ寂しい、だけじゃない。
まだいてほしかった、とも違う。
なんで?とも思わない。
その先も応援したいと、心から思うし、
きっとどこでも輝くのだと分かっている。

でも勝手に、もう一つ上の先輩を二人で泣きながら見送るものだと思っていたし、
勝手に、ツアーの合間も一緒にいるものだと思っていたし、
勝手に、そういう時の写真も撮り合うものだと思っていたし、
勝手に、見送られる未来もあり得るなと思っていたりした。

彼女は彼女だけのものなのに、優しすぎる彼女を私はどこか都合よく解釈して、本物の彼女とは違う偶像をつくりあげていたのかもしれない。そう思ったりもして、そんな自分が痛くて、居た堪れなくなった。

でも確かにここで「偶像〜?」と首を傾げる彼女は絶対にいる。手に取るようにわかる。だって彼女にチップを埋め込んだかのように、いつだって正解率100%を誇ってきたのだから。でも、そんなふうに信じてたものが信じられなくなったりした。私は本当に、彼女のそばにいられたのだろうか。

結局帰るに帰れず、カラオケに逃げ込んだ。一緒に何度も歌った夏の歌は、あんなに練習したはずなのにメロディーはぐちゃぐちゃだった。




雲のような人だと思う。

風に流され形を変え、私たちはそれを見てなんの形だあれに似ている、かわいい美しいと言うけれど、当の本人は集まった小さな粒をいっぱいいっぱいかき集めて、そこにいる。光があたれば色が変わり、時に強すぎる日差しから守ってくれる。引くと言う美学も持っている。優しさのかたまりだ。だけど、ちゃんとゆっくりと雲は流れ、姿形を変えている。

朝起きたら、空は一面雲だった。
私はまだ、うっかり忘れるほど受け入れられてないみたいだ。
次にあったら、目が合わせられないかもしれない。文句を投げつけてしまうかもしれない。

だけど彼女はきっと、「怒った?」なんていって笑って受け止めるのだろうと、脳細胞が教えている。

日常に溶け込んだ記憶が多すぎて、暦の上で春を迎える頃にはきっと、一緒に笑えていると思うから。

今はまだ雨降る曇天のままで。
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