>>47
続き

首都の片隅と言うには人通りが激しい繁華な場所で、辺境地域Nのセイローシティ産のさくらんぼの移動販売車両が店を開いていた

都の人らもセイローシティ産さくらんぼの高い価値は良く知っており

財布と相談の上で買うかどうかを決めるために大勢の人が足を止めて値札を見る

そして彼らの知るセイローシティ産さくらんぼの相場の半値の安い値段に驚く

そんな人らの疑問を解消するかのように売り子の若くて、お肌がツルツルピチピチな娘らが宣伝の口上をする

売り娘「さあさあ、ご通行中の皆さんに、今日は甘露たっぷりのセイローシティ産のさくらんぼを提供しに、北の辺境地域Nからはるばるとやって参りました、私たちがセイローシティーさくらんぼの会です」

売り娘「このセイローシティ産さくらんぼの値段を見て、まさか偽物とお思いの方も居らっしゃるかも知れませんが、安いのには訳があります」

売り娘「皆さん、このセイローシティ産さくらんぼを良く見て頂けると分かると思いますが、僅かですが傷があったり形が不揃いだったりの、店頭には出せないで弾かれた物なのです」

売り娘「しかし、見栄えは幾らか悪くても、味は正規のセイローシティ産さくらんぼと何一つ変わりません、この私と同様に見た目だけでは味は分からないのと同じですよ」

売り娘の冗談に見学者がどっと笑えるのは、口上をしている売り娘も、後ろに控えている売り娘も、若い女性フェロモンを溢れかえさせるような可愛い娘ぞろいばかりだからである

売り娘「さあさあ、興味のある方は、どの籠でも構いませんから、おひとつ試食をしてみてください、試食したから買いなさいとか、押し売りはいたしませんよ、ただ美味しいからって二つ三つと食べるのはご遠慮願います、さあ、そちらの方は如何ですか?」

売り娘に指名された見学者が少し迷いながらも、一粒のセイローシティ産さくらんぼを口にして、中毒性が有るとまで言われる甘露に陶然とする様を見せる

その様子を見ていた他の見学者も無作為に別の籠からセイローシティ産さくらんぼを食べて、やはり甘露な世界に囚われる

売り娘「どうぞ試食したい方は並んでくださいな、そして宜しければお買い求めください、見栄えは悪いですが、すぐに傷んだりはしませんので、ご安心ください」

次から次へと試食を済ました見学者が、今度は相場の半値のセイローシティ産さくらんぼを買い始めるのに、大して時間はかからなかった

そして辺境地域Yの、とある場所のモニターで新興組織Aの女ボスWは
女部下らが悪魔のさくらんぼの実を売りさばく様子を見ながら独り静かにニラニラと笑っていた


続く