>>139
続き


「どうしてなんだあああああああああっ!!俺は無実だ、死にたくないいいいいい、ボケーッ」

教誨師たるあの女の読経が響き渡る刑場の中で、ワシは絶叫しながらもがくように暴れた
一分一秒でも生き永らえたいと思う人間の生への執着とは恐ろしいものだ
立ち合いの刑務官を次々と投げ飛ばしたはずが引きずり回され、岩のように頑丈な刑務官に猫パンチを振るっていた
しかしワシはもともと力も何もなければ格闘技の経験もないカスのような人望民だ
親にも勘当され、村八分にされ、ジャスカスどもにも笑いものにされていた
勢いなどと言うものはいずれ尽きていく

「あがっ!!ごっぎゃああああああああああああああああああああああああ」

すぐに取り押さえられ、両腕を後ろ手に取られたその瞬間、右の肩から「メリョッ」という異常な音がした
刑務官の力で肩の関節が砕けたのだ

「大人しくしなさいガラパゴスくん。いいかね、踏板が外れたら歯を食いしばりなさい」

激痛とともに拘置所長の声が耳に入り冷静さを取り戻した
いや、これは冷静さではないのかもしれない
もうワシには成す術がないのだ
ある意味の覚悟なのかもしれない
声にならない声になりながら、開いた口に警棒を加えさせられ、猿轡にされていく
しかしどうだろう
この女の教誨師はワシのことなど意にも介さず、ただひたすらに歌うように経文を唱え続けていた

ーそれ 人間の浮生なる相を つらつら感ずるにー
ーおおよそ儚きものは この世の始中終 まぼろしのごとくなる一期なりー
(中略)
ーされば 朝には紅顔ありて 夕には白骨となれる身なりー
(中略)
ー念仏申すべきものなり あなかしこ あなかしこ 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏ー

やがて拘束された腕は縛られ、足首も拘束された
最後の目隠しの前に視界に入ったのは、あの教誨師の後ろ姿だった

そして踏み板の前に引き立てられ、ワシの首に絞縄がかけられた


続く