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案内所が用意した運転手は三人と比べても歳に差が無さそうに見える若い娘だった

三人はもうじき日が落ちる時間帯ではあるが、暑くなく寒くなく気持ちの良い海風に包まれながら
若い娘が運転してきたワンボックスカーに近づいていく

車の運転席から降りてきた若い娘は金色の何かが前後ろに印刷されているTシャツとホットパンツを着ている
そしてテキパキと三人の荷物をワンボックスカーに積みながらにこやかに話しかけてきた

若い娘「こんにちは、お客さんたちは竜宮島(妖精島)は初めてなんですって、若いのに通な趣味をしてるわね、自画自賛めいて聞こえるかも知れないけど、私は島生まれの島育ちで楽しく暮らしているの、お客さんたちもここにいる間くらいは忙しないことを忘れて楽しんでいってちょうだいね」

若い娘はYの巨大スーツケース二個のあまりの重さにには苦戦をしながらも荷室に三人の荷物を積み終えると
後部のゲストシートに乗るように三人に薦めてくる
しかしYだけは送って貰える間に、島に付いて詳しいあなたに色々と訊いてみたいから助手席でと言いながら座ってくる

若い娘は構いませんけど××(案内所の職員)さんほどには長生きじゃないから、古い話とかは詳しくないですよと笑って助手席をYに薦める

若い娘「××さんは生まれてから今まで特に用事がなければ、ずっと島暮らしの人で島については辞書みたいな人の一人なんですよ、幼稚園から大学までの生粋の島のエリートです、それに比べたら私は大学だけは島の外に行くしかなかった落ちこぼれでね」

若い娘がやや自嘲気味に言いながら、そんな私で良ければどうぞ訊きいてくださいとYに笑いかける