>>77
丘の方から物凄い勢いで中年の男女が倒れた少女とワンボックスカー中年夫婦のところに駆けよってくると、スズ、スズ、スズと少女に名前を呼び掛ける

少女の両親らしい男女の呼び掛けにもスズは無反応で息だけはかろうじてあるようだ

意識の無い少女の両親の父親がワンボックスカーで轢いた夫婦に向かい、掴みかかるほどの勢いで何で避けないんだ馬鹿野郎と怒鳴り付け

少女の頭側に座り込んだ母親も恨みがましい突き刺さる視線を向けてくる

だが奇跡が起きたのだろうか、少女スズが倒れたままながらも、目を開けて両親の名前を呼びながら、痛いよ、助けて、痛いよ、助けて、痛いよ、助けてと喋り出したのだ

少女の意識が戻った事で両親も幾らかは余裕を取り戻したのであろう

救急車が来ましたら私たちも娘に付き添い病院に行きますが

私たちは運動を兼ねて◇◇から歩いて来て、ほとんどお金を持って出て来なかったので

あなた方とは娘の交通事故の件でまた会いますので、その時にお返ししますからお金を貸してくださいと頼んできた

だんだん、痛い、痛い、痛いと苦しむ少女の声が弱々しくなってきた

思ったよりも早く救急車は来たが、死にかける少女を前に焦るワンボックスカー夫婦は
救急車が小高い丘の方から来たのを気にする余裕がない

そちらは山の方面なので消防署は無いのだった

急かされたワンボックスカーの夫婦は所持金のほとんど全部を少女の両親に貸すとにした

スズの両親は娘を轢いたことはまだ許せませんが、お金を貸してもらい助かりますと言う

テキパキと少女をストレッチャーに乗せて救急車内に搬送する救急隊員に続いて両親が乗ってすぐに救急車は走り出す