1991年8月のウクライナの独立宣言を巡り、ソ連カザフ共和国のナザルバエフ大統領が枝村純郎駐ソ連大使に対し、ウクライナの独立はソ連への反発というより、連邦内で力を増し、民族主義的傾向を強めたロシア共和国への反発だとの考えを示していたことが、21日公開の外交文書で分かった。

現在のロシアのウクライナ侵攻につながる対立の火種が、当時から顕在化していたことが改めて示された。ナザルバエフ氏はソ連末期の有力政治家の一人で、2019年まで独立カザフスタンの大統領を務めた。

2人はソ連崩壊を決定づけた91年8月のクーデター未遂事件から間もない8月27日、モスクワで会談した。

ナザルバエフ氏は、ロシアによるソ連資産の接収やロシア人中心の人事、さらに独立するソ連構成共和国への領土請求権を主張した点を「ロシア帝国が常に求めた」力の信奉と批判した。

枝村氏が8月24日のウクライナ独立宣言は「連邦に対してではなく、ロシアに反対する趣旨か」と尋ねると、ナザルバエフ氏は「全くその通り」「ついこの間まで完全独立など考えてもいなかった」と答えた。

その上でナザルバエフ氏は「われわれはロシア・ナショナリズムに懸念を持っている」と述べた。ロシアの動きを懸念しているのはソ連内の「全ての共和国」だとした。カザフ自体は同年12月に独立宣言した。