>>61
YとHとSがどうにか満足出来る値段で土地付き住居が売れて、いよいよ住む場所も無くなったのでそろそろ行きますかと

帝国領外地から帝国領内地に向かう船が出ている港街に向けて出発した

やはりケチな三人の考える事ではある、家財道具を運送屋に運ばせる事も公共の交通機関を乗り継いで行く事もしないで、より費用が安く済む方法で行くのを迷わずに選んだ

廃棄寸前で只で手に入れた古い補助アシスト動力付きの大型荷車に、YとHとSが家財道具一式と長旅に必要な物資を積み込んで旅立つ

しかしYとHとSの見通しが甘かったのに気が付くのは、出発した街と次に行きたい街のほぼ中間辺りに着いた頃であった

次の目的地の街に向かうためにYとHとSは交代で大きな荷車を曳いて走っている

廃棄寸前に見えた荷車は近衛軍が遥か以前に正式採用していた荷車で、近衛軍が正式採用するだけあり耐久性の高さと整備性の良さには定評がある逸品で

今でも近衛軍は所持している荷車を稼働可能状態にして予備装備として保管しているくらい信頼性の高さを誇るものであった

三人が見付けた荷車は製造日が古過ぎて、民間では荷車を整備するのに必要な専用工具や部品が手に入れにくいために
ある時期から使われていないで雨ざらしで放置されていたのだった

とても永く生きてきた三人は帝国領外地を点々と無職で暮らす前に、帝の近衛軍の軍属として働いていた時期があった

近衛軍で雑役をしていた三人には馴染みの荷車な上に整備や修理のやり方も教わっていた

その関係で荷車関係の専用工具や部品をコッソリと私物化していたのは、後で何処かに売るつもりだからだった

汚れたみすぼらしい見た目の荷車ではあるが、基本構造部分は何の問題も無いのを知った三人は

荷車がまともに動かなくなった原因が、手に入れにくい正規部分の代わりの部品を使った事によると見抜いた

そこで手持ちの専用工具と部品で荷車を直して荷車本来の性能を取り戻して使う事にしたのだった

旅立った三人は少しでも近道をしたくて主要道路を外れて、もう何年も使われていない道に進路を変えていく