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マックスバカ浦の会が首都にSの為に用意した自宅でのこと

辺境地域Yの女ボスWが率いる新興組織Aのメンバーらから、辛くも逃げ切ったSが玄関の中に倒れ込み気を失う

そんなSの傍らに幼なじみの青年が現出するが、彼も顔色が悪く具合が悪そうである

それでも青年はSを抱き上げると寝室に入りSをベッドに寝かし付ける

すやすやと涎を滴ながら気持ち良さそうに眠るSを見守りながら、ますます具合が悪そうな青年は床にへたり込む

あのまま地元のセイローシティで休養を取っていると、どうしても偽物セイローシティ産さくらんぼの被害の話が

Sの耳に入るのを防げないと考えた青年はSを内から誘導して、首都の自宅へ帰らせたのだった

ここ数日間のSは気晴らしに、あちこちに出掛けていたのだが、まさか偽物セイローシティ産さくらんぼを売っている娘らに出会すとは全くの想定外だった

Sに産み出された人口精霊から一人前の精霊に成長した青年であったが

Sを助ける為にと意図的に現出する回数が増えた為か、Sと同化しての回復期間時に完全に意識を失う時間が発生し、またその時間が伸びていたのだ

そして、それが原因でSが女ボスWの女部下らに拉致される寸前まで、Sの危機に気が付かなかった

怪しとしての能力を限界以上に使いSを危難から救出した為に、青年は人間で言えば死にかけていた

しかしWの女部下のドーピング強化娘らから逃げるにあたり
Sの身体能力も限界以上に強引に引き出す必要があった為

Sもまた安らかな涎まみれの寝顔とは裏腹に衰弱しきっていたのだ

そんな衰弱したSに青年が回復の為に同化してしまえば、Sの命が危ういのを青年は分かっていた

このまま、もう暫くの間はSの生命力はSの回復の為だけに集中させておき

青年が同化しても耐えられるくらいに回復するまで待つつもりなのだ

例えSの回復が間に合わずに己が元の無に帰すとも、最期までSを護るのが務めであり幸せであると思いながら

青年はSの耳障りなイビキと歯ぎしりを子守唄代わりに床に座り壁に凭れたまま微睡みに落ちていった

青年「Yさん、Hさん、Sの事をよろしくお願いします」

その呟きを最後に青年もまたSと同様に眠りに入る

青年がまたSに逢えるかどうかまだ誰にも分からないのだった