アパホテル22階から客転落し死亡、「バルコニーの柵が低い」と支払い命令…基準以下の72センチ
2/27(月) 20:41配信


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読売新聞オンライン
判決を受け記者会見する男性の妻(手前)ら(27日午後、東京・霞が関で)=米山要撮影

 ホテルの宿泊客が転落死したのは客室のバルコニーの安全性に問題があったためだとして、遺族がホテルを運営するアパホテル(東京)に計約1億3162万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、ホテル側に計約1779万円の支払いを命じた。大嶋洋志裁判長は「バルコニーに設けられていた柵は、建築基準法などに違反して基準より低く、安全性を欠いていた」と述べた。

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 判決によると、男性(当時46歳)は2019年8月、出張で宿泊した大阪市西区の「アパホテル大阪肥後橋駅前」(休業中)で、22階の客室のバルコニーから地上に転落し、出血性ショックで死亡した。

 客室の窓は開閉を制限する装置を解除すると外側のバルコニーに出られる構造だった。男性はスマートフォンで風景を撮影しており、バランスを崩して誤って転落したという。

 建築基準法施行令は、2階以上のバルコニーには高さ1・1メートル以上の柵などを設置しなければならないと規定しているが、ホテルのバルコニーに設けられていた柵の高さは72センチだった。

 ホテル側は訴訟で、バルコニーは非常時の一時避難場所として設置されたもので不特定多数の人の出入りを想定しておらず、同施行令の適用外だと主張した。

 しかし、判決は避難用バルコニーには同施行令が適用されると判断。「避難する人は転落の危険性が高い」とも述べ、バルコニーに欠陥があったと認定した。

 一方、バルコニーに非常時以外に立ち入った男性の過失も認め、賠償額は慰謝料などから算定される損害額の3割に減らした。

 判決後、東京都内で記者会見した男性の妻は「子供たちも頼れる父を突然失い、悲しみに暮れている。このような事故を二度と起こさないでほしい」と話した。

 アパホテルは「ご冥福(めいふく)をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみ申し上げます」とした上で、「ホテルは(大阪市の)建築主事より完了検査終了後に確認済証を取得しており、建築基準法に適合していると考えている。控訴を予定しており、現時点で争点となるコメントは差し控える」と回答した。