>>627
スターリングラードはもはや街ではない。
日中は火と煙がもうもうと立ちこみ、一寸先も見えない。炎に照らし出された巨大な炉(ろ)のようだ。
それは焼けつくように熱く、殺伐として耐えられないので、犬でさえヴォルガ河へ飛び込み、必死に泳いで対岸にたどり着こうとした。
動物はこの地獄から逃げ出す。どんなに硬い石でも、いつまでも我慢していられない。
人間だけが耐えるのだ。神よ、なぜ我らを見捨てたもうたのか