「僕に対して変化させてあげようと思ってくれる人たちが周りにいてくれて、(言われたのが)小さいステップにするということ。大谷(翔平・エンゼルス)がやっているんだからできるだろう、というくらいの説明だったんですけど」

 秋山は打撃改造の経過を、ジョーク交じりに説明する。確かにこれまでも、ステップ幅の修正を含め、すり足打法のような改良に取り組んだこともあった。だが、最終的には定着せず、西武時代と同じように右足を上げて体重移動する打法を続けてきた。だが、今回はコーチ陣に加え、同僚のマイク・ムスタカスが足を上げるために重心が上下動するリスクを指摘してくれたことが、「かたくなにノーステップとすり足をやりたくないという感じではなかった」という秋山の背中を押した。

「迷いながらやっているとか、ただ結果が欲しくて焦ってやっているというのとは違う。課題を持ちつつも、勝負なので『いい形になるように』と思いながら打席に入っています」

 確かな手応えがあるわけではない。だが試行錯誤を続ける中、秋山はこれまでにない感覚を、肌で感じ取っていた。3月28日。カブスとのオープン戦の第2打席。カウント2-2からの内角速球を捉えた打球は、高々と舞い上がり、前進してきた右翼手のグラブに収まった。記録上は、当然「右飛」として処理されたに過ぎない。だが、秋山の感覚は少しばかり違った。始動からのタイミング、バットと球の衝撃音、両手に残る感触は、ほぼ完璧に近かった。右翼手が捕球する直前に、秋山が二塁ベース手前に到達するほど、滞空時間の長い飛球だった。

 まさに、紙一重だった。

 ミート力に定評のある秋山が、パワーを兼ね備えた可能性を感じさせる、浅い「右飛」だった。

「あの打球の上がり方というのは、打球に力が乗ったなと。(今までの)僕のこすった打球だったら、二塁ベースより反対(左)に行くと思うんです。ああいう上がり方がなかなか僕の中にないので。違う打球の種類が出てきているというのは、また違ったいい感覚みたいなものが出てくる可能性もあるので。あれはもうちょっとでしたね。ああいうバットの出方、体重の乗り方、上がり方というのが出たというのはありましたね」

でもノーステップに手応え感じたから…