種から植えて育ててきた矢野

「そもそも矢野ガッツの始まりは、唯一、外部から招聘した清水雅治ヘッドコーチ(54)のアイデアです。3月に行われた侍ジャパンの強化試合に外野守備走塁コーチとして参加していた清水ヘッドが、お祭り騒ぎで野球を楽しむメキシコチームの雰囲気に刺激を受けて『うちでもやってみましょうよ』と矢野に持ちかけたんです。矢野監督と清水ヘッドは中日時代に同じマンションに住んでいたほどの盟友ですから、その進言をすんなり受け入れました」

 矢野監督は2軍監督時代から、選手にヒーローインタビューのマネ事をさせたりと、ポジティブ思考でチームを変えようと取り組んできた。それだけに清水ヘッドの進言は、まさに自分の考えとマッチしたのだろう。

「矢野監督は昨年、2軍監督就任と同時にいわゆる自己啓発など、啓蒙書の類いを読みあさり、特にアドラー心理学に心酔していた。その影響を受けての指揮は『スピリチュアル采配』と言えるかもしれませんね。ミーティングでは、本でかじった名言や訓話が飛び出し、若手には好評でした」(在阪スポーツ紙記者)

 ドイツの有名な心理学者として知られるアルフレッド・アドラーの心理学にも「怒る」「叱る」などの縦の関係よりも感謝の意を重要視する横の関係を大切にしなさいとの教えがあり、その理論が、一緒になって楽しむガッツポーズの根拠になっているのだ。