「打ちそうやなぁ〜」

 そんな雰囲気を感じたのは4月6日の甲子園でのDeNA戦。9回表に同点とされ、延長12回までもつれ込んだ試合である。先発の伊藤将司は9回1失点、本来なら勝ち投手になっている内容だった。
伊藤が降板後は10回を岩崎優、11回を湯浅京己が無失点で抑え1対1の同点で最終回を迎えた。マウンドに斎藤友貴哉が向かうも、先頭の4番・牧秀悟に中前打を許し、続く5番・宮ア敏郎は四球。無死一、二塁で迎えたのは6番・大和だった。

【写真】この記事の写真を見る(2枚)

 まずここで“?”が浮かぶ阪神ファンもいるだろう。守備職人として聖地を守ってきた大和が6番に座っているのである。阪神在籍時は一軍昇格を果たした2009〜2017年までの9年で本塁打はわずか3本。しかしDeNAに移籍した2018〜2021年までの4年ではなんと8本もの本塁打を放っている。
もちろん、本拠地が甲子園から横浜スタジアムに移ったことも影響していると考えられるが、打率も2020年、33歳のシーズンにキャリアハイの.281を残した。6番に座っていてもなんらおかしくないわけである。

 勝ち越しの場面で大和を迎え、“嫌な予感”がしたのは私だけではないはずだ。この日甲子園に詰めかけた34,125人の虎党もきっと感じていたはずだ。1球目、2球目は犠打の構えを見せて2ボール。3球目はそのまま犠打を試みるも空振りとなり2ボール1ストライクとなった4球目。
ヒッティングに変えた大和の打球は左翼の芝生へと転がった。三塁に進んでいた牧が生還し、これが決勝点。その後4点を追加するDeNAの攻撃の口火を切った形となった。