えっ待って吉床尊い


どこか感慨深い気持ちがこみ上げた。「吉川、体デカくなったな」。マウンド上の左腕は思わず笑みをこぼした。

 試合開始と同時に打席に立った吉川尚輝内野手(24)と、広島の先発、床田寛樹投手(24)。何度も対戦したライバルとの、久しぶりの再会だった。

 同学年の両者は岐阜学生リーグでしのぎを削った。互いに1年時からリーグ戦に出場。最も強豪格だった中部学院大のエースでリーグ戦通算21勝を挙げた床田だが、「(スカウトが注目する)吉川を抑えられたら、プロへの道が開けると思っていた。でもよく打たれました」と、中京学院大で不動の遊撃手だった吉川尚を強く意識していた。その吉川尚も「リーグ戦のカード1戦目は床田が先発でした。床田の球は違いました。中部学院大は強かったので、勝ったときはうれしかったですね」と振り返る。4年時の2016年には中京学院大が大学選手権で全国制覇を成し遂げ、岐阜学生リーグが脚光を浴びた。2人は無名だったリーグの代表的存在だった。

 今回のオープン戦が待望のプロ初対決となった。第2打席は吉川尚が外角の直球を左翼線へ運ぶ二塁打。「相変わらずミートが上手くて、足も早い。素直に『さすがだな』と思いました」と床田。打たれた悔しさすら、懐かしく感じた。

 「やっと大学以来の対戦がまたできる。負けたくない。今まで打たれていたので、プロでは抑えたい。ちょっとでもあいつ(吉川尚)に近づけたらと思います。ライバルとは言えないですね。吉川の方が2個も3個もレベルが上なので」

 先発ローテ定着を目指す床田はシーズンでの対戦へ胸を弾ませた。一方の吉川尚は「久々に対戦できてよかった。大学の時より、真っすぐも変化球もキレが増していた」と舌を巻いた。若い2人はこれから何度も対戦することになる。負けたくないと張り合った2人の物語が、再び進み始めた。(谷川直之)