身長166・5センチは騎手の中では高い方。そのため、体重管理という壁はデビュー前から立ちはだかっていた。「乗馬苑のジュニアチームの頃から、ずっとしんどかったんです。でも、誰にもそれを言いたくなかった。デビューしてからも体重のことばかり考えてしまって…」。誰にも言えない性分。一人で抱え込んだ結果、体重調整に失敗する悪循環に陥ってしまった。

デビュー数カ月で、早くも騎手人生のどん底と言ってもいい状況。そんな若武者に、手をさしのべた一人の先輩ジョッキーがいた。

 松田大作騎手(43)=栗東・フリー=だ。身長は168・0センチで西谷凜同様、減量は簡単ではなく、同じ思いをしてきた。「デビュー前、大作さんに“つらかったら相談してきて”と言われたのを思い出して、ここまで落ちてしまったのならダメ元でもと思って。そしたら“来るのを待っていた”と。いろいろ教えてくださったり、親身になって話を聞いてくださったりしました」。勇気の一歩を踏み出し、胸のつかえが下りた。

 翌週から一緒に減量を開始。当時は北海道滞在中のため、競馬場の調整ルームでランニングやサウナで汗を流した。トレーニングはもちろんのことだが、「気持ち的なところが一番大きかった」と、松田が精神的支柱となったことで効果は増大。少しずつ、形としてそれが表れた。