24日午後4時半、海に転落した。自動操舵(そうだ)の船は港へぐんぐん進む。船に戻るのはあきらめ、遠くに見えた岸壁を目指した。

 冬用のチョッキ型救命胴衣を着ており、寒さと浮力の心配はなかった。空気を入れて浮き代わりにした長靴を右手に抱え、左手で水をかいた。

 疲れると仰向けになり、波に身を任せた。風が陸向きに吹いていたこともあり、約2時間でテトラポッドに着けた。「小潮だったから、運もよかった」

 あまりの疲労にそのままその場で寝てしまった。どれくらい寝たかは覚えていないが、起きたら真っ暗。

 裸足で国道を歩き、車を止めようとしたが、誰も止まってくれなかった。

 約3キロ離れたコンビニまで歩き、タクシーを呼んでもらった。25日午前4時すぎに帰宅した。「大変だったが、トライアスロンをしたと思えばいい。港に帰ってきた船も偉かった」

 念のため病院で見てもらったら軽い肺炎だった。海を相手に50余年。大きな病気はしたことがない。「海に落ちても、慌てたらいかん。覚悟を決めんと」(中村光)
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