フォーリンラブのバービーさんが芸人として、ひとりの女性として、日頃抱えているモヤモヤと向き合い、本音をズバッと綴っているFRaUweb連載「本音の置き場所」(毎月1回更新)。今回は、先日結婚1周年を迎えたバービーさんが、結婚直前にパートナーであるつーたんさんと大喧嘩し、大号泣した日のことを振り返り、改めて考えた「結婚」「夫婦」「既婚者」とは……を綴っていただきました。

 近所の居酒屋の前を通るたびに思い出す。「今日どこで飲もうか?」となっても、かならずスルーするいわくつきの店。

 私たち夫婦はちょうど1年前の4月9日に婚姻届を提出した。

 なぜその店を避けるのかというと、その2日前、大喧嘩&大号泣した店だからだ。その日の自分を「マリッジブルーだったから」なんて言葉では片づけたくない。そんないっときの感情の波や、脳内ホルモンの関係で揺らいだわけではない。店の前を通るたび、婚姻について一生懸命悩み抜いた1年前の私の残像がカウンターに座っているように見えるのだ。

 炎を見ると人は、心が落ち着くと言われている。

 「なぜ、火を見ていると、一緒に見ている人との会話が弾んだり、互いの距離が近く感じるような気がするのでしょうか。暖炉のある部屋で会話をすると、リラックスして、癒されることから、相手と親しくなれそうと感じ、親近感を持つことがわかっています。」by東京ガス

 その店は、目の前で豪快にわらで鰹を焼いてくれるパフォーマンスが人気。炎の効果は絶大で、会話は弾みに弾み、炭と一緒に爆ぜた。

 しかし、目の前のいろりから轟々と出る炎を見ながら、私たちの喧嘩は落ち着くどころかヒートアップしたのだった。

婚姻届けを出すことを迷った理由

 東京ガスは悪くない。私たちが各々持ちあわせていた本音という爆弾に火がついただけである。姓が変わることに納得できない私に、「だって、しょうがないじゃないか」と、えなりかずきさんがチラつくようなパートナーの表情が腹立たしかった。

 「しょうがないけど、せめて、あなたは理解していて」と、彼に対する寂しさと、制度に対する悔しさで涙が溢れた。

 店員さんも痴話喧嘩を始めたカップルに焦って焼いたのか、藁焼きというわりにはやけに生っぽい鰹を泣きながら食べたことをしっかり覚えている。

 婚姻届を出そうと決まってからも、私は旧姓の笹森姓を打診し続けた。姓名判断やあみだくじを提案するも、もろくも崩れ去る。

 そもそも、法律婚をするかどうか長らく結論が出なかったのは、どちらも姓を変えたくないという思いが理由のひとつだ。まだ、選択的夫婦別姓制度が導入されていないため、話は平行線を辿っていた。