藤原氏はベストセラー『国家の品格』の中で次のように述べている。
「論理的に得られた結論は盤石ではないのです」
「人間にとって最も重要なことの多くが、論理的に説明できないということです」

藤原氏が取り上げたのが、「なぜ人を殺してはいけないのか」という有名な問いである。以前、日教組の教研集会で、傍聴していた高校生が会の最後の方になって、「先生、なんで人を殺しちゃいけないんですか」と質問した。しかし、そこにいた先生たちは、誰一人それを「論理的に」説明できなかった。

これに対して、藤原氏はこう言い切る。
「人を殺していけないのは、『駄目だから駄目』ということに尽きます。『以上、終わり』です。論理ではありません。このように、もっとも明らかのように見えることですら、論理的には説明できないのです」
続けて藤原氏は、会津藩の教えを例に取る。江戸時代、会津藩の藩校には「什(じゅう)の掟(おきて)」というのがあった。「虚言を言うことはなりませぬ」「卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ」「弱い者をいじめてはなりませぬ」等々。
 この掟を結ぶ言葉は、
「ならぬことはならぬものです」
 だったという。
「要するにこれは『問答無用』『いけないことはいけない』と言っている。これが最も重要です。すべてを論理で説明しようとすることはできない。だからこそ、『ならぬことはならぬものです』と、価値観を押しつけたのです」

ダメなもんはダメで終わりや