2戦目の第1、第2打席で凡退した牧は、悩み始めていた。ベンチに戻ると、たまたま隣に座っていた大和に尋ねた。

「自分、どんな感じですかね……」

 大和は低い声で簡潔に答えた。

「牧、変えんなよ」

伏線がある。
 開幕カードのジャイアンツ戦。その試合前練習の合間に、牧は大和に質問をぶつけていた。コンディショニング、試合に臨むための準備をどうしているのか。チーム最長、キャリア16年目のベテランの経験を自身に生かそうと考えたのだ。

大和は言った。

「1年目は、いいところを伸ばしていくことが大事。年を取るにつれて自分の悪いところっていうのはわかってくるから。バッティングにしろ、守備にしろ、いまは自分の悪いところを直そうとするのに時間を使うんじゃなくて、いいところをどんどん伸ばすことを考えたほうがいい。変えずに、自分らしいことをやっておけば大丈夫だよ」