あの人は今  元ロシア連邦大統領 ウラジミールさん(72歳)

2024年、ロシア連邦解体。 それをテレビで見つめる男がいた。
47歳で将来を嘱望されロシア連邦大統領に就任した、ウラジミールさんだ。
「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想するウラジミールは、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。ウクライナ戦争で、ロシア軍が2日で完勝する夢を」
ウラジミールさんは69歳の時、ウクライナに戦争をしかけ、2年間戦いを続けたが
戦局が好転することはなく、国民から戦力外通告を受けた。
今はボルシチ屋を営む傍ら、地元の少年柔道のコーチを勤めている。
暖簾の屋号の文字は元ロシア国防大臣、ショイグさんの手によるものだ。
「いらっしゃい」。モスクワ駅東口から歩いて3分。
「ボルシチ KGB」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると白いタオルを
頭に巻いたウラジミールさんと妻、カバエワさんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『KGB』という文字はショイグさんに書いて
いただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙や西側テレビでも取り上げてもらった。
おかげで、国外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
ウラジミールさんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。
とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「ボルシチ好きは飛行機に乗って本場・ウクライナまで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクが修業したウクライナの老舗『わなか』のものは豚のスペアリブがベースなのが特徴だから、牛骨スープを使うロシア人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけどそれも修業のうち。我慢、我慢です」
かつてのライバルでウクライナ大統領ゼレンスキーについて尋ねると…
「知ってます?69歳までは僕の方が(権力)上だったんですよ?」と、おどけ
「西側の軍事支援さえ無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度はこの、ボルシチで世界一になれるよう、
がんばるだけです!」
(写真)たこ焼きを手に持つ藤浪さん