木下雄介さんとの約束だった 金メダルを天に向けた大野雄大 答えるかのように雨ポツリ【東京五輪野球】


◇7日 東京五輪 野球決勝 日本2―0米国(横浜スタジアム)

 亡きチームメートとの約束の金メダルだった。初めての五輪で金メダルに輝いた中日・大野雄大投手(32)が表彰式で、3日に亡くなった中日・木下雄介さんにも見てもらおうと、メダルを天へ掲げた。

 大野が首に掛けた金メダルは投手陣下支えの役割をまっとうしたから。登板は中継ぎ登板だった2日の準々決勝・米国戦のみ。決勝も待機。初回からブルペン調整はしていた。

 勝敗によってめまぐるしく変わる日程に加えて、ゲーム展開によって中継ぎ投入の可能性も加わった。ペナントレースではあり得ない状況。「胃がねじ切れそうです」。消化のいい食事で体をいたわり、ペナントレースとは違う大会球を握って心を落ち着かせた。

 望んだ役割だった。稲葉監督の視察を受けるたびに「何でもやります」と言い続けた。便利屋を志願、侍のよろず屋となった左腕。「いい経験させてもらいました」。出場した者にしか味わえない感情と向き合い、不安と付き合った。

 仙台の合宿でも決勝の横浜スタジアムでも、他の投手ではなくスタッフとのキャッチボールで調整した。11人の投手陣。キャッチボール相手がいない投手が1人出る。チームを見回しての行動だった。「最年長なので。ボクもマー君についていく、という気持ちが強い。できることはやっていこうと思います」

 ハイライトは表彰式。空を見上げ、左手でメダルをつかみ高く掲げる。中日では、ともに汗を流した木下雄介さんが3日にこの世を去ったばかり。「木下から『金メダル取ったら見せてください』と言われていました。見せられてよかったです」。頂点に立った報告をした。亡き右腕も気づいたか。スタジアムにはポツポツと雨が降ってきた。

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