「大城さん、昨日、何泣いてたんすか」

 空気を読まないとまるで自分で決めているような岡本和真キャプテンのすこし甲高い声。この飄々とした人柄にどれだけ助けられたか。低迷するチームの空気が重く沈んでいるときも岡本和真のこの誰とも等距離で接する性格は間違いなくチーム再生に不可欠だった。盤石な4番は、打線をつくるだけでなくチームの背骨になる。

2030年、大城卓三は、引退を考えていた。――小説ジャイアンツ「男たちの黄昏」 より