JR九州が運用する高金利の預金制度があると装い、現金をだまし取ったとして、詐欺容疑で18日逮捕されたJR九州グループ会社元役員の容疑者の男(68)=鹿児島市伊敷台2丁目=は20年以上前から、同級生ら知人から現金を集め、鹿児島県警は確認しているだけで被害者は二十数人、被害総額は5億円を超すとみている。

ほぼ全財産の約9000万円を失ったという女性は21日、「何度も死のうと考えた。時間とお金を返して」と涙ながらに語った。
女性は県外に住む70代。
元金と利息を受け取ったという友人から10年ほど前、男を紹介され、信用した。実際に勤めていたJR博多シティ監査役の名刺を見せられたことで「疑う余地はなかった」。
 
「子や孫に老後の心配や苦労をかけたくない」と男の話に乗った。
夫の退職金、満期となった保険金、母親の遺産、娘の貯金、田畑約1300平方メートルの売却費…。
2012年ごろから20年にかけ約9000万円を預けた。
返ってきたのは「利息」約70万円だけという。
 
今年2月、女性の自宅を男が訪ねてきた。
玄関で「返せません」と土下座された。それ以来生きた心地がしない。「死んだ母に『早く迎えに来て』と毎晩手を合わせている」
 
年金と共働きによるわずかな収入で生活している。
食料や現金を持って「死んじゃいかんよ」と訪ねてきてくれた友人にも預けた本当の金額は明かしていない。
警察に被害届も出していない。「小さな集落。警察が自宅に来ただけで大きな騒ぎになるから」
 
娘は「お金は返ってこないかもしれないけれど、できる限りのことをやってみよう」と励ましてくれる。
だが、自分を責める気持ちは消えないという。「ばかでまぬけだった。情けない」と漏らした。