長嶋監督は僕のことを一年目から特別扱いしてくれた。練習も自由にやらせてくれるし、
「キヨ、どうだ?」といつも声をかけてくれる。しかしその優しさが周辺との摩擦と孤立を招いた。
 他の選手はヨソ者である自分が長嶋監督に特別扱いされていることに嫉妬し、露骨に無視をする。
一緒に遊んだり食事をすることもほとんど無く、いつも独りで飲みに行った。
 そうしてチームに馴染めず孤独を深めていった僕のことを気にかけ、さらに長嶋監督の特別扱いが増す。
 長嶋さんは優しさで包んでくれたが、その優しさは僕にとって薔薇の棘でしかなかった。
(清原和博著書「男道」より)