https://news.yahoo.co.jp/articles/d4e68e45b25383de4be0d11a362ea93d46069000
【AFP=時事】普段は物静かに話す飯塚麻結(Mayu Iizuka)さん(26)は、都内の一室で自身のアバターのライブ配信が始まると、激しく手を振りながら甲高い声でトークを始めた。

 画面にはキャラクター「琴吹ゆめ」として登場する。使うのは、ノートパソコンとウェブカメラ、首に装着したモーションセンサーで、表情はプロデューサーがコントロールする。

「アニメ声」にミニスカート、大きな紫色の瞳──アニメの美少女キャラ的な琴吹ゆめは、仮想キャラクターをアバターとして使い、動画を投稿するバーチャルユーチューバー(VTuber、Vチューバー)に多い特徴を備えている。

 日本のニッチなサブカルチャー、Vチューバー界が誕生して約5年。データ分析企業ユーザーローカル(User Local)によると業界は急成長を遂げ、現在配信中のVチューバーは世界で約1万6000人に上る。

 動画投稿アプリのティックトック(TikTok)やライブストリーミング配信プラットフォームのツイッチ(Twitch)などでファンを増やし、中には1億円以上を集めるVチューバーもいる。

■投げ銭世界ランキング上位10人中9人はVチューバー

 Vチューバーが収入を得る方法は、ライブ配信にユーザーが送金する従来の「投げ銭」システムとほとんど同じだ。ユーチューブ(YouTube)の投げ銭機能「スーパーチャット(Super Chat、スパチャ)」では、金額が高額になれば、そのユーザーの投稿がより目立つ仕組みになっている。

 昨年、スーパーチャットで投げ銭を集めたユーチューバーの世界ランキング上位10人のうち、9人がVチューバーだった。データ分析サイト、プレーボード(Playboard)によると、9人はいずれも東京の同じVチューバー事務所に所属し、獲得金額は70万ドル(約9000万円)から170万ドル(約2億2000万円)に上った。

 大半のファンが投げ銭機能で支払うのは1投稿につき数百円程度だが、中にはバーチャルアイドルへの熱い思いを伝えるために5万円程度の額を投じるファンもいる。

 自動車部品の検査員として働く男性(30)は、チャンネル登録しているVチューバー本人に自らのコメントを読んでもらえるよう、1万円の投げ銭を行うこともあるという。「どうしても『今日も自分がやって来たよ』というのを伝えたくて投げちゃう」と話す。

 またコンピューター・エンジニアで、カズミと名乗る男性(30)は、東京近郊にある自宅のアパートの一室をお気に入りのキャラ、大神ミオ(Mio Ookami)のポスターや額入りの写真、キーホルダーなどで埋め尽くしている。

 仕事が終わった後や週末は、大神ミオの動画を見ながら、タブレットでイラストを描くことに没頭する。大神ミオのことだけを考えている間に、5時間、10時間とたっていることもあるという。

「僕らファン層と彼女(大神ミオ)と全部踏まえて、一つの家族なのかなと思ってますね」

 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(D.A.Consortium)で新規テクノロジー事業開発本部の研究開発局長を務める永松範之(Noriyuki Nagamatsu)氏は、スーパーチャットはアイドルやアニメのファンがグッズに金銭をつぎ込んで「推し」を応援しようとする日本のファン文化の延長線上にあるとAFPに話した。

「承認欲求というところも大きいと思います。他のファンと(自分を)差別化して優越感に浸る人も」

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