「まだ通じるか」

 何も言わずに返球する。

「次、本気な」

ミットをパンと叩いてその音で返事をする。菅野がニヤリと笑った。この球を受けていたい。一球一球が音をたててミットに吸い込まれていく。パン、パン、パン、パン。その音はあのダムの小さな穴に杭を打ち込んでいく音のようだった。

「俺が投げるとき、お前必ず打てよ」

「ハイッ」

「お前、そんないい声で返事できるんだな」

そう言うと菅野は、次はカーブを投げるぞとグローブで合図した。

翌日、大城は球場で青木宣親が引退するというニュースを聞いた。