打撃改善のきっかけは稲葉GMのアドバイス

雪辱を誓い、迎えた春季キャンプ。清宮のバッティングを見守っていた前田は、昨シーズンまでとは違う“ある変化”に気づいた。
「長打力は元々あるので、柔軟性、バットコントロール、腕の使い方とか上半身の使い方が非常にうまいんですよね。改善されているところは、やはりタイミングの取り方ですね。まずそこが一番目につきました」
(前田) 着目したのは、タイミングの取り方。
前田:「以前は体重を軸足に乗せた後、ボールに向かっていく動きが大きかった。左足から右足に体重移動する、ピッチャーに対しての前後の動きですね。今日(2月25日)見た感じではそれが少し抑えられていて、ピッチャーに自分からあまり近づかないというか」
清宮:「意識しています。結構最近ですね。そこがすごく気になっていて(ピッチャーに向かって)スウェーしてしまうというか」



復調の理由のひとつは、タイミングの取り方を改善したことだった

「スウェー」とは、身体がピッチャー方向へ突っ込むこと。ボールを見極める時間が短くなってしまう動作だ。 去年の二軍での打撃フォームと、前田が変化に気づいた今シーズンのキャンプでのフォームを見比べてみると、わずかではあるが突っ込む動作が抑えられていた。 なぜ今年、「スウェー」を改善しようと思ったのか?
清宮:「ペッパートスバッティング(投げ手に対して正確に打ち返す練習)をやっている時に、稲葉さんから『普通ペッパーって右足に(体重を)乗せてピッチャーに返すんだけど、お前は軸足(左足)で操っているんだね』って言われて、左半身でボールに力を伝えていくイメージの方が合っているんじゃないかと気付きました。打ちに行く時に手が後ろに残らない、一緒に前へついてくるクセがあるので、最近は最初から手を離しておいてタイミングを取るようにしています」
前田:「左半身で打つ意識をするようになってスウェーが抑えられた。その中でボールの見え方、捉え方、距離感は変わってきた?」
清宮:「すごい変わりました。今では身体の近くまで呼び込める感じが出てきたかなって」
前田:「ボールが少し長く見えている感じですね」 稲葉GMのアドバイスをきっかけに、特に手の位置を左の軸足側に残し、身体の突っ込みを抑えた。その結果、ボールを長く見られるようになり、選球眼が向上したという。 打率1割台に沈んだ2年前、清宮がボール球に手を出した割合を示す「ボールコーススイング率」は、25.0%。同じ年にチームトップの打率(3割4分0厘)をマークした近藤健介の15.0%とは大きな差がある。 高い打率を残すには、見極める力が求められるのだ。