「正社員」の廃止が必要だ
こういう実定法と司法の矛盾を解決するには、労働基準法を改正して金銭解雇を可能にすべきだという意見が昔からあるが、労働契約法16条では逆に解雇権濫用法理が立法化されてしまった。

ジョブ型正社員は、そこから一歩前進したようにみえるが、解雇できない無期雇用という点は同じなので、ジョブがなくなったら余剰人員になってしまう。それでもパート事務員ならつぶしがきくが、大学の研究者はそうは行かない。

理系の大学では、競争的資金を獲得して若いポスドクをたくさん雇うケースが増えている。そういう場合は資金の期限に応じて有期雇用にすることが多いが、無期雇用を義務づけられると、研究資金がなくなるので、その期限までに雇い止めするしかない。専門性の高い職種では、使い回しのきく正社員という前提が満たされないからだ。

本質的な問題はジョブ型かメンバーシップ型かではなく、すべての雇用を契約ベースにして金銭解雇を解禁し、定年まで解雇できない正社員という雇用形態を廃止することだ。正社員を守ろうとする役所や裁判所の温情主義は労働者を救う善意かもしれないが、結果的には彼らの仕事を奪い、日本経済をますます停滞させるのだ。