夕方にはほぼ満車状態だった駐車場が、自分の車と向かいのワゴン車しか止まっていない。
そういえば1Fも2Fもすっからかんだったなと階段を上ってきた時のことを思い出しながら、
なんとなくそのワゴン車を薄目で見た。

女が乗っていた。
異様なのはその姿だった。目と口を大きく広げてこちらを見ていた。
髪はぼさぼさで赤い服を着ている。
なぜだかわからないが私はそのまま眠ったふりをした。起きているのがばれたら殺される気がした。
薄目でちらちら見張っていたが、女は微動だにせず未だこちらを凝視している。
一時間くらい経過したころ、車内は蒸し暑くなり、汗が頬を何度も伝った。
頭がぼーっとして意識が飛びそうになった時、女が車を降りてこちらに向かってゆっくり歩いてきた。