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『セミ』

友人が大口を開けて欠伸をしていた。
「どうした、寝不足か?」
「あー、アパートの隣の奴がうるさくてな。ムカついて怒鳴り込んでやったら少しはおとなしくなったんだけど、今度はセミだよ」

季節は夏。今も外ではミーン、ミーンという鳴き声が響き渡っている。

「確かにこれはうるさいけど、窓を閉めればそれほど気にならないんじゃないか?」
「閉めてるよ。だけど毎晩ベランダで鳴かれるもんだからさ。毎朝窓を開けると、セミがベランダで死んでるんだよ。気持ち悪い羽根向けてさ。
まあ、自然現象だから仕方ないけどな」
「へー、それは大変だなぁ」

俺は気付いてしまったが、黙っていたほうが幸せだろう。