亮太君はもともと人付き合いが苦手で、小中学校時代にはいじめにも遭ったことがあります。高校入学後にやさしく声をかけてくれた女子にひかれ、付き合いたいという思いが強くなったのです。しかし、亮太君は、クラスの女子が自分に好意を抱いているのか否かということを考えることができませんでした。たとえ、好意があったとしても、恋愛対象としてみているのか、単に友だちとしてみているのか、ということまで考えがおよびませんでした。

 「自分が相手の子を好きだから、その子も同じ気持ちのはずだ」という強い思い込みもありました。自分と相手の気持ちが常に一致するとは限らないことや、相手には相手の気持ちがあるということを理解することができないのです。このような、人の気持ちに対する認知のあり方は、亮太君にもともとある障害特性に深く由来していると考えることができます。