過去2年は打率1割台と低迷、計180試合で本塁打わずか7本だったことを
考えれば、今季の猛打ぶりはより際立ってくる。一体彼に何があったのか。

 地元紙『ニューヨーク・ポスト』の取材に応じたヤンキースのマット・カーペンターが
明かしたのは意外な理由だった。

 過去2年の不振は年齢による身体的な衰えが理由とする向きが多かった。しかし
本人は「自分のスウィングが何かおかしかった。フィジカルじゃなく、メカニクスの問題
だった」と振り返る。

 現状を打破するためには“新しい視点”が必要だ。そう考えたカーペンターが藁にも
すがるような思いで意見を求めたのが、同じ左打者で10年にMVPを獲得したことも
あるジョーイ・ボトー(レッズ)だった。ボトーとカーペンターはナ・リーグ中地区で長く
しのぎを削ってきた関係であり、言わばライバルにあたる。それでも、カーペンターは
昨季37歳ながら36本塁打を放って復活を遂げた先輩に頭を下げ、オフにともに
トレーニングを行った。

 そこでカーペンターはボトーの特殊な打撃練習に目を奪われた。ボトーが行って
いたのは、球速と回転数を最大値まで上げたピッチングマシーンを使い、打球速度を
向上させる練習だった。

 ボトーとの練習だけにとどまらず、強打者JD・マルティネス(レッドソックス)らを指導
した打撃コーディネーターの下を訪れたり、元チームメイトでシルバースラッガー賞
4回のマット・ホリデイにもアドバイスを求めた。ホリデイからは、右足の開きが
早すぎることでミスショットしていると指摘されたという。

多様な意見を取り入れ、かえって元のいいところまで崩れてしまう選手もいる。
しかし、カーペンターの今季の活躍を見ると、最高の形で結実していることが
見て取れる。