■愚痴ると、浜口さんはフッと力なく笑って…

 1時間ほどで仮設トイレの汲み取りを終え、浜口さんと車に戻った。あまりにもイラついたので、思わず愚痴ってしまう。

 「なんかあいつら腹立ちますね。明らかに俺らのこと下に見てましたよ」

 フッと力なく笑って答えた。

 「まあ、イラつくけど仕方ねえよ。それが仕事だからな」

 うーん、まだ、イライラが収まらない。あの見下した感じがムカつく。

 「あんなのしょっちゅうだよ。いちいち気にするだけ無駄だって」
「そうなんですか……」
「俺らだってさ、ホームレスを見下したりすることあるじゃん。それと一緒だよ」

 なんか納得いかないなあ。

 「さ、次でラストだ。早く終わらせようぜ」

 その次も同じような建設現場で、さげすむような視線をビンビン感じながら作業をこなした。人前でやるには気が引ける。その点、浜口さんはキモが据わっていて、終始、表情を崩さなかった。

 時刻は16時。タンクにつまった、し尿を処理施設に運び込んでから、足立区の事務所に戻ってきた。始業のときは気になったガレージのニオイも、いまとなっちゃほぼ無臭に感じる。