こんなんばっかやってるから誘われたら脱走して犯罪するんやろ

 私が取材したフエさん(仮名.20)という女性の奨学生も、週40時間働いていた。勝ち気な彼女は販売所の経営者に対し、就労時間を減らせないなら残業代を支払ってほしいと訴えた。だが、軽くあしらわれてしまう。

「留学生は週28時間までしか働けないことになっている。だから残業代は払えない」

 実に身勝手な論理だが、弱い立場のベトナム人たちにはどうすることもできない。

 フエさんの不満は他にもある。「4週4休」を販売所が「月4休」と解釈し、月の5週目は休みを取らせてもらえない。就労6カ月が経過すれば10日認められるはずの有給休暇もない。

「奨学会には相談しました。でも『仕方ない』と言われるだけでした」

 フエさんは月10万~12万円の手取り給与から毎月1万円の「奨学会費」を天引きされている。にもかかわらず、奨学会に助けを求めても取り合ってもらえない。それどころか、奨学会はベトナム人奨学生に対し、日本人との差別待遇まで制度として課しているのだ。