ヤクザやん

 「触んな、触んな!」――。捜査員が命令する声が響く。店の周囲には100人規模の捜査員が集まり、未明の新松戸は物々しい雰囲気に包まれた。
 店は、昼間はベトナム料理店として営業しているが、夜になると、シャッターを閉め、ベトナム人しか入れない。そこは、賭博場に姿を変える。
 捜査員が立ち入った際、男らは床に座り、「ソックディア」と呼ばれるベトナムの丁半ばくちをやっていたという。サイコロなどを茶わんに入れて振り、出た目が偶数か奇数かを当てる賭博だ。
 胴元や参加した客はいずれも20~30歳代の若いベトナム人。逮捕されたベトナム人は、捜査員に連れられ、1人ずつ、うつむきがちにマイクロバスに乗り込んだ。

 賭博は、SNSを中心に参加者を募っているとみられる。ベトナム人向けのフェイスブックには、仕事紹介と共に、「今晩もいつも通り21時から……」と賭博への誘い文句が並ぶ。

 賭博を巡っては、在留ベトナム人の間でトラブルが続発している。賭博場で借金をつくり、返済できなくなったベトナム人が、誘拐されたり監禁されたりして、祖国の家族が身代金を要求される事件が全国で相次いでいる。