魔境

FRIDAYは事件当日に容疑者らと行動を共にした少年Cのサトル(仮名・17)に取材。事件の一部始終を明かしてもらった(以下、「 」内はすべてサトルの発言)。

「僕がトー横に行くようになったのは、去年の夏頃からです。特に家庭環境に問題があったわけではないんですが、地元や学校に馴染めず、気が合う仲間が欲しくてトー横に行き着いた。逮捕された関口、亀谷の二人と出会ったのもトー横でした。彼らは20代だったので、僕らのなかでは年上。ヤクザだと吹聴していたらしいですが、普段はコンビニ弁当や飲み物を奢ってくれる”良い人”でした。

少年AとBもトー横で知り合いましたが、僕は仲良くなかった。Aは不良で、Bも木更津の暴走族グループのメンバーと言われていました。人をボコボコにした写真を見せてきて、『すごいだろ』と自慢するような暴力的な奴らでした」

一方の氏家さんは、歌舞伎町の清掃などをするボランティア団体『歌舞伎町卍(まんじ)會』のメンバーだった。トー横キッズからも親しまれていたという。

サトルは普段、歌舞伎町の『ホテルリブマックス』をたまり場にしていた。事件が起きる11月27日の朝も、サトルは少年Dと『リブマックス』にいた。

「その日は亀谷とAも一緒でした。みんなでエレベーターを降りたら、偶然、彰さんと鉢合わせたんです。亀谷は彰さんを見つけると、『ちょっと来い』と脅した。そして、僕とDにもついてくるように命じました。亀谷とAは、Aが住む新宿の『ライオンズマンション』の駐車場に彰さんを無理やり連れていった。時間は朝7時頃だったと思います。

駐車場に着くと、Aと亀谷が彰さんに暴行を加え始めたんです。突然のことに驚いて、僕とDは立ちすくんでいました。15分ほど殴る蹴るが繰り返されているうちにマンションの住民がでてきたこともあり、事件現場のビルに移動しました。あのビルは屋上に入れるということを亀谷が把握していたみたいです。記憶が定かではないんですが、ビルに移動している間に関口も合流したんだと思います。
ビルへ向かう途中、彰さんは僕に何度も『助けてくれ。このままじゃ殺されてしまう』と懇願してきました。

助けるべきだ、と頭ではわかっていたんですが、もし彼らを止めると今度は自分がリンチされる、と思い足がすくんでしまった。あのときの彰さんの切羽詰まった表情は、今でも鮮明に覚えています」