いま、劇的な風景写真が多すぎなんですよ。コンテストの審査をしていると、もう、しょっちゅう「ありえないでしょう、こんな風景写真は」。

 現場主義ではなくて、レタッチに頼った作品。

 それがおかしいことだと気づいてくれればいいんですけれど、みんな、「いかにレタッチするか」に気持ちがいっちゃっている。

 誤解してほしくないんですが、「レタッチをするな」、ではないんです。出来上がった写真が不自然でなければ、レタッチしてもいいんです。でも、出来上がった写真が不自然に見えるから、「レタッチしすぎ」なんです。

 もっと言うと、不自然な写真になっていることに、実際の風景を目にした撮影者自身が気づいていない。

 イメージ写真であればアリ、ですよ。例えば、コマーシャルフォトであれば、何をやってもいいと思います。クライアントがいて、その注文に合わせて写真をつくっているわけですから。

 でも、自然風景を撮るのであれば、自然を自然に表現してほしい。それをレタッチで見たことのないような風景にしてしまうから違和感を覚えるんです。「これはイメージです」って、注釈を入れたほうがいいんじゃないかと思うような風景写真をみんなが目指しちゃっている。
それがふつうになってしまった風景写真の現状がこわいんです。

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