ノリの打撃理論で打てるかわからんし

指導法①『下半身2』で『腕8』!?

秋季練習で、中村コーチは自分が現役時代使っていたバットを手渡した。ふだん石川選手が使っているものより長く、簡単には使いこなせない代物だ。石川選手がバットを替えることはなかったが、中村コーチの狙いはバットを使わせることではなかった。石川選手の意識を変えさせたかったこと、そして期待の表れでもあった。

中村コーチがまず教えたのは『下半身2』で『腕8』の意識で打つということだった。石川選手も驚いたという。それもそのはず、野球経験者はだいたい、指導者から「バッティングは下半身が基本。下半身で打て」と教え込まれてきたからだ。

そしてその理論について、中村コーチに聞くと下半身の意識をしすぎることである弊害につながるという話を語ってくれた。

中村 紀洋 コーチ
下半身を意識すると手がおろそかになる。なかなかバットが出てこない。手を意識して速くバットを出せるように。

「手が出なかった」という失敗をさせたくない。そんな思いがにじみ出ていた。

②右手で打て!

中村コーチの理論は「腕の意識」だけにとどまらない。どっちの手でバットを操作するよう意識するのか。これも、セオリーでは右バッターはピッチャーに近い左手を意識するよう指導されるが、中村コーチの指示は逆の手なのだ。

右手だけで打つティーバッティングをさせる。ボールを捉えるまで最短距離でバットを振る感覚を身につけることが狙いだ。

中村 紀洋 コーチ
昔、若いときによく教えられたのは『左手で打て』と。僕は右手重視で打てば操作しやすいなというふうに思っていたのでそれを実践でやってもらってます。