最後の力を振り絞り、高橋宏は思い切り腕を振った。「何とか三振を取って、いい流れで終われるようにと思って、気持ちを入れました」。7回2死で森を153キロの直球で空振り三振に打ち取った。自己最多の112球を投げ、7イニング3安打2失点。奪三振も自己最多となる12を数えた。それでも19歳の右腕に笑顔はない。

 「三振を100個奪っても勝てるわけではない。流れを渡すピッチングをしてしまった」

 1球に泣いた。1点リードの3回。2死一塁で佐野への初球だった。捕手の石橋は内角に構えていたが、直球は真ん中付近へ。甘い球を打ち返され、右翼席へ痛恨の逆転2ランを浴びると、がっくりと両膝に手をついた。「試合が決まる一発だった」と唇をかんだ。

 試合前、柳に声をかけた。17日の阪神戦(甲子園)で7イニング3失点。数字だけなら先発投手としての役割を果たしている。「いいピッチングでしたね」。しかし返ってきた言葉は「チームを勝たせる投球じゃないよ」。先輩右腕は初回に3点を失い、相手に主導権を与えたことを悔いていた。触発されるかのようにチームの勝利だけを求めて腕を振った。だからこそ一発に沈んだ自分の投球が許せない。「柳さんが言っていた反省が僕にもそのまま当てはまる試合でした」

悲C