>>247
川崎宗則著「逆境を笑え」から
イチローさんは今までどんだけおれを引っ張ってくれたか。ここでイチローさんを助けるのはおれだろ。イチローさんを守るのはおれだろ。
何してんだ、おれはアホか、最低の男だ。
イチローさんは打席に立った。
おれは、ダルと並んでイチローさんを応援した。ダルは打たれて、おれは打てなくて、2人、ガックリ来てる。
あのとき、おれとダルがどんな目でイチローさんを見つめていたか。どんな想いで見ていたか。

イチローさんは、林昌勇の8球目、シンカーを捉えてセンターへ弾き返した。ウッチー、ガンちゃんが相次いでホームへ駆け込んだ。2点を勝ち越す、タイムリー。
もう、うわーって感じじゃないんだよ。
シーンと静まりかえるんだ。
えっ、これは本当のことなのか、夢じゃないのかって思うんだ。
みんなが現実かどうかを確かめるから、一瞬、シーンとする。そこから、うわぁーっといく。
イチローさんは、何もかもを背負って、打った。
うわぁーっ、イチローっ、イッチろぉー。
もう、呼び捨てよ。ダルのケツ叩いて、叫んだよ。
おい、くっそー、お前、やったぞ。
イチロー、やったぞ、おれたち、命、助けてもらったぞって。
アイツもハイって。
あのときのガッツポーズは、イチローさんに向いてない。おれたちに向いてた。よっしゃ、きた。また鬼神が出た。