2016年7月、JR岡山駅からタクシーで25分ほどの郊外にある岡山刑務所(岡山市北区牟佐)。正門脇の小部屋で手続きを済ませ、待合室のベンチで30分ほど待っていると、一番奥の面会室に入るよう指示された。その3畳ほどの小部屋は、中央で厚い透明のアクリル板によって仕切られていた。目と鼻の先にある「獄中」と「娑婆」は、互いに決して行き交うことのできない仕組みだ。「娑婆」側のパイプ椅子に腰掛けていると、「獄中」側のドアが開き、刑務官に促されるように、薄緑の作業服を着た男が入ってきた。ここで会うのは、約3年ぶりだ。
「お久しぶりです。お元気ですか」
 帽子を取って椅子に座ると、男はアクリル板に顔を近づけて、笑みを浮かべた。男の名前は中川政和(仮名)。1988年2月、世間を震撼させた「名古屋アベック殺人事件」(後述)の主犯格として無期懲役が確定し、ここ岡山刑務所での服役生活は20年になろうとしている。