これが村上に出来るかでメジャー成功するか決まるな

ジーターが語るイチロー
初めてイチロー(「Ichi」と呼んでいる)と個人的に会ったのは、セカンドベース上だった。
(今から考えると、イチローは頻繁にセカンドにいたのだが。)最初のうちは丁寧な感じであまり話もしなかったが、英語にそれほど堪能でなかったのだろう。しかし1年ほど経った頃、イチローがツーベースを打ってセカンドにスライディングしてきた。

私が頷くて挨拶すると、ユニフォームの土を払いながら彼が話しかけて来たのだが、その言葉に意表を突かれた。

「What’s going on, my main man?」(和訳するのが難しい英語だが、親しい友人同士の挨拶で、ニュアンスからすると、「おーっす、どうだ、調子は。」という感じ。)

「Main man?」驚いた私はただ笑顔で返した。こいつ、どこでこんな言い回しを習ったんだ?
その後、何年もの間、私がイチローとセカンドで会う機会が増えた。
イチローはいつもフレンドリーだったが、彼の英語が上達するにつれ我々の交わす会話も長くなっていった。

しばらくすると、投球の間など、カタコトでなく、完全な文で話すようになった。

チームメートたちから教わったいろんな英語の言い回しを披露して、イチローはいつも私を笑わせてくれた。
イチローが新しい国に、そして新しいチームに、上手に慣れていくのが私にはよくわかった。
シアトルというのは本当にイチローを優しく受け入れた街であり、マリナーズの選手たちの間にもいい雰囲気があったからこそ、いいチームでいれたのだろう。

イチローの英語力が猛烈な速さで上達したことには驚かなかった。
言語に対するイチローの姿勢は野球に対する彼の姿勢と同じで、「努力、そしてさらに努力」というものだったからだ。