きっかけは、インターネットでみた街頭演説だった。

《あなたの生活が苦しいのは、あなたのせいにされていませんか。あなたが役に立たないからとか、あなたが勉強してこなかったからだとか。冗談じゃない!》

 山本氏の言葉を聞くうち、名古屋市に住む50代男性は、涙があふれてきた。

 4月末のことだった。電子部品工場で3時間ほどの残業を頼まれ、自宅に帰り着いたのは夜9時過ぎだった。数カ月前に念願の正社員になったのはいいが、このところ残業続きだ。家賃3万8千円の1Kアパートには、「おかえり」と声をかけてくれる家族はいない。朝8時15分の始業からほとんど休憩なしの仕事。疲れすぎて食事を作る気がしない。もやしときゅうりをつまみに缶酎ハイを1本あけた。


 「明日も6時半に起きて出勤しないとな……」「一体なんのために生きているのだろうか……」

 街頭演説の動画に出会ったのは、そんなときだった。

 正直言って、これまでは山本氏のことが大嫌いだった。「脱原発」をくり返すだけのタレント政治家。単なる目立ちたがり。そんな風に思っていた。

 でも……。

 通帳の残高は5万円ほどしかなかったが、その中から1万円を寄付した。